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プレスリリース

ぜんそく治療薬シクレソニドの新型コロナウイルス増殖抑制機構の解明について

 この度、群馬パース大学大学院 木村博一教授の研究チームが、杏林大学医学部、群馬大学医学部、国立感染症研究所、北里大学大村智記念研究所ならびに横浜市立大学医学部との共同研究で、喘息治療薬の一種であるシクレソニド(売薬名オルベスコ®製造元:帝人ファーマ株式会社)の新型コロナウイルス増殖抑制機構をドッキングシミュレーションという手法を用いて、分子レベルで明らかにし、アレルギー・臨床免疫学の専門誌(J Allergy Clin Immunol., Kimura et al., 2020)に掲載されました。これらは、シクレソニドの新型コロナウイルス治療薬候補としてのエビデンスを提供し、今後の創薬にも役立つ成果です。以下にその概要を報告します。
 現在のところ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対し、決め手となる抗ウイルス薬は開発されていません。しかし、いくつかの市販薬(シクレソニド、ファビピラビル、レムデシビルならびにイベルメクチンなど)が、本感染症の治療に有効であることが示唆されています。
 シクレソニドは、喘息治療のための吸入薬として、約15年前から世界各国で使用されています。また、別の効果として、国立感染症研究所の松山室長らが、培養細胞を用いた実験で、シクレソニドが、新型コロナウイルスのゲノム複製を抑制するということを報告していますが、その詳細は不明でした(Matsuyama S et al., bioRxiv, 2020)。
 そこで、新型コロナウイルスのゲノム複製に関与するウイルスタンパク質とシクレソニドとの相互作用を先端バイオインフォマティクス技術ならびに高性能コンピューターを駆使したドッキングシミュレーションという手法を用い、シクレソニドの分子レベルでの抗ウイルス効果を詳細に研究しました。その結果、シクレソニドは、新型コロナウイルスゲノム複製酵素(RNA依存性RNAポリメラーゼ)には作用しませんでしたが、複製の際に生じた変異を修正する酵素(NSP15エンドヌクレアーゼ)の活性中心と結合し、ウイルスゲノムの正確な複製を阻害することを初めて明らかにしました。これらの結果は、シクレソニドの分子レベルでの新型コロナウイルスに対する抗ウイルス作用のメカニズム解明に貢献するだけでなく、今後の新しい抗ウイルス薬の設計などの創薬にも役立つ情報として期待されます。
 なお、本研究で示された知見については、今後、実際のタンパク質を用いて検証を行う必要があると思われます。

●詳細:https://www.jacionline.org/article/S0091-6749(20)30749-1/abstract

●教員紹介ページ:木村博一教授

 

※本研究は、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業「病原体ゲノミクスを基盤とした病原体検索システムの利活用に係る研究(JP20fk0108103)」の支援を受けて行われました。(https://www.amed.go.jp/program/list/11/02/002.html)

 

▼6月19日付毎日新聞(17面)に記事が掲載されました。

 

▼6月18日付上毛新聞(1面)に記事が掲載されました。

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