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新型コロナウイルス感染症の発症後早期における重症化予測に関する研究について

 この度、群馬県衛生環境研究所・猿木信裕所長ならびに群馬パース大学大学院・木村博一教授の研究チームが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化早期予測に寄与する成果をスイスのウイルス学の専門誌(Viruses, Tsukagoshi et al., 2021)に公表しました。
 これらの成果は、新型コロナウイルス感染症の発症早期における重症化予測に関するエビデンスを提供し、かつ重症化予防に寄与する重要な新知見と思われます。以下にその概要を報告します。
 本疾患は、発症後、一定期間を経て(発症から約10日以降)、肺炎や急性呼吸窮迫症候群(ARDS)などの症状が進むと呼吸機能の低下により、重症化する場合があります。このような重症化した状態になると致死率も高くなることが予想されます。したがって、発症早期において各症例の予後を予測し、重症化を予防するための臨床介入が極めて重要になります。
 現在のところ、新型コロナウイルス感染症の診断は、リアルタイムPCR法によるウイルス遺伝子の検出、発熱や呼吸器症状(肺炎など)の臨床所見ならびに血液検査(Dダイマーの検出)などによって行われています。また、重症化の因子としては、年齢(70歳以上)、基礎疾患(高血圧や糖尿病など)の有無などがあげられています。しかし、本疾患の発症早期における重症化予測の明確な臨床的な指標はなかったと思われます。
 そこで、研究チームは、PCR検査で新型コロナウイルス陽性となった370例から得られたデータ、具体的には、感染者の年齢、ウイルスゲノム排泄量、体温、肺炎の有無ならびに臨床的な予後などを詳細に解析しました。その結果、発症後5日以内において、70歳以上で肺炎症状を示し、ウイルスゲノム排泄量が高値(ウイルスゲノム定量値に換算し、鼻腔ぬぐい液1mlあたり10⁹コピー以上)の症例は、致死率が有意に上昇することを明らかにしました(図)。
 これらの結果は、発症早期に新型コロナウイルス感染症の重症化を予測し、かつ重症化を防ぐための臨床的な疾患管理を行ううえで、重要な知見として、今後活用されると思われます。

●発表論文の詳細:https://www.mdpi.com/1999-4915/13/2/304
●群馬県衛生研究所の紹介: https://www.pref.gunma.jp/07/p07110001.html
●取材申し込み先:群馬県衛生環境研究所 主幹 塚越博之
        群馬パース大学大学院 教授 木村博一
●教員紹介ページ:木村博一教授

 ※本研究は、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業「病原体ゲノミクスを基盤とした病原体検索システムの利活用に係る研究(JP20fk0108103)」の支援を受けて行われました。
https://www.amed.go.jp/program/list/11/02/002.html)

図 ウイルスゲノム排泄量と感染者の予後
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